ファームウェアとは?ソフトウェアとの違いや機能、必要性について解説
ファームウェア、ソフトウェア、ハードウェアと、IT関連の用語には似ている言葉がたくさん存在しています。ファームウェアは私たちが日常的に接しているコンピューター機器のほとんどに内蔵されてますが、あまり知られていないモノのひとつです。この記事では、ファームウェアの機能や必要性、OSなどとの違いについて解説しています。ぜひともご確認ください。
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Contents
ファームウェアとは
ファームウェアとは、ハードウェアを動かすためのソフトウェアのことです。ソフトウェアの一種であるため、ハードウェアのように物質的に存在するものではなく、C言語やアセンブリ言語、Javaなどで開発された無形のプログラムとなっています。
ファームウェアはパソコンや携帯電話などのハードウェア内部のROMに組み込まれることが多く、ファームウェアをユーザーが自発的に操作することはあまりありません。そのため、アプリケーションなどのソフトウェアとは違う、ハードウェアに近いソフトウェアとして、【firm:硬い、堅固な、しっかりとした】という単語が利用されています。また、シーンによっては『FW』や『F/W』などの略称で表記されることもあります。
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ソフトウェアとの違い
上述したように、ソフトウェアはハードウェアと違い物体がなく、コンピューター上で動作するプログラムの総称です。ソフトウェアにはファームウェア以外にもさまざまな種類があり、OSやドライバ、ミドルウェア、アプリケーションなどの聴き慣れている名称のモノも含まれます。
また、OSであればWindowsやmacOS、Linux、アプリケーションであればExcelやAdobe Photoshopなどのようにソフトウェアの製品名が付けられますが、ファームウェアにそれらのような製品名はありません。加えて、ファームウェアによってはアップデートの操作などをおこないますが、基本的にユーザーがインストールやアンインストールをするものではなく、その点においても他のソフトウェアとは異なっています。
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OSとの違い
OSとは、コンピューターをコンピューターとして利用するために不可欠なソフトウェアです。OSが入っていないパソコンはパソコンとして利用できないため、基本ソフトウェアとも呼ばれています。コンピューターを動かすためにはOSが必要ですが、OSを動作させるには過程があり、その役割をファームウェアが担っています。
パソコンの起動ボタンを押すと、OSを動作させるためにまずはファームウェアが働きます。つまり、ファームウェアがないとOSを稼働させることができません。ファームウェアはハードディスクやキーボードの準備など、ハードウェアを制御する役割を持ち、OSが動作できる状況を整えます。
また、パソコンのファームウェアのことをBIOS(Basic Input Output System|ベーシック・インプット・アウトプット・システム)といい、BIOSは『マザーボード』と呼ばれるパソコンの重要な基盤に組み込まれることが一般的です。加えて、OSについてより具体的に解説をしている記事もありますので、よろしければご確認ください。
関連記事:LinuxとWindowsは何が違う?それぞれのメリット・デメリットや特徴を解説
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ドライバとの違い
ドライバとはデバイスドライバの略称で、デバイスドライバはデバイス(パソコン本体やマウス、プリンター、スマートフォンなどのハードウェア)を動かすために必要なソフトウェアです。ドライバもファームウェアと同じようにハードウェアを制御するのですが、両者にはOSとの関わり方が異なっています。
ファームウェアはOSが稼働する前にハードウェア制御をおこない、利用できる状態にするのに対し、ドライバはOSが稼働してからハードウェア制御をおこないます。そのため、ファームウェアがハードウェア制御→OSが起動→ドライバがハードウェア制御という流れになるため、ファームウェアとドライバは同じハードウェア制御の役割がありながら仕組みが異なります。
また、例えばプリンターを購入した際にディスクが付いてきて、そのディスクからプログラムをインストールしたり、Webサイトからプリンターを動かすために必要なプログラムをインストールすることがあります。この作業は、プリンターというハードウェアを制御し、利用するためのドライバをパソコンにインストールしています。もともと持っていたパソコンには、新しく買ったプリンターを制御するドライバがないため、プリンター(ハードウェア)を制御するドライバが必要になるといった具合です。
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ファームウェアと組み込みソフトウェアの違い
組み込みソフトウェアとは、冷蔵庫や洗濯機、電子レンジ、エアコン、カーナビゲーション、工場生産ロボットなどに利用されるソフトウェアプログラムのことです。組み込みソフトウェア開発では主にC言語やC++、Javaなどが利用され、広義ではインターネットに接続ができるIoT(Internet of Things|モノのインターネット)も組み込みソフトウェアとして扱われます。
洗濯機や冷蔵庫も部分部分を見ていくとハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアから構成されています。洗濯機のハードウェアは、洗濯機という物体そのものやCPU(中央演算処理装置)、ミドルウェアはハードウェア制御、ソフトウェアではOSをはじめ、スイッチを押したら洗濯開始、洗濯機の蓋が開いていたら稼働停止などのシステムを組み込みます。
また、あくまでファームウェアはソフトウェアの一種であり、広い意味でとらえると『組み込みソフトウェア』に内包される可能性があります。文脈によって意味が変わってくるので、混同しないように注意をしましょう。
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アップデートの頻度
従来の組み込みソフトウェアはインターネットに接続されていなかったため、製品が購入されたあとにアップデートや機能追加をすることなどはほとんどありませんでした。しかし現在では、IoTが広がってきたことにより組み込みソフトウェアのアップデートやファームウェアのアップデートがおこなわれるようになってきています。
ファームウェアも組み込みソフトウェアも不具合の改善や機能追加などでアップデートがおこなわれるため、機器によって更新のタイミングは異なります。
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目に触れる機会
組み込みソフトウェアでの機器の操作方法として、タッチパネルのモノが普及してきています。タッチパネル操作などのデジタル画面を見るとシステムが組み込まれていることを直感的に理解することができますが、ファームウェアは基本的にハードウェアの内部に組み込まれています。また、物資的なシステムではなく、プログラムとして存在をしているためユーザーが目にすることはありません。
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対応範囲
この項目のはじめにお伝えしたように、ファームウェアもソフトウェアの一種であり、『組み込みソフトウェア』の一部として説明される場合があります。IT系の用語は『アーキテクチャ』のように文脈や利用されるシーンによって意味が変わるものや、広義でとらえるか狭義でとらえるかで見方が変わるモノが多くあります。慣れてくれば適切な意味を把握できるかと思いますので、消化しきれない場合は調べていくようにしましょう。
関連記事:アーキテクチャとは?本来の意味やIT業界での使われ方を詳しく解説
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ファームウェア搭載機器
ファームウェアはパソコンやインターネット関連機器などのコンピューターが関わるモノに多く搭載されています。今回の記事では代表的なものとして以下の4つを紹介します。
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BIOS
ユーザーに意識されることなく稼働しているファームウェアとして、パソコンのBIOSが特に有名なモノかもしれません。上述したように、BIOSがなければOSは稼働しませんので、とても重要な役割の機器となっています。BIOSは名前(Basic Input Output System)のとおりインプット(入力)とアウトプット(出力)の基本的なシステムで、OSの起動以外にも周辺機器の制御もおこなっています。
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ネットワークプリンタ
ネットワークプリンタとは、ネットワークに接続されているプリンタのことです。会社などでプリンタを利用する際は、複数のパソコンからひとつのプリンタで印刷をすることがあると思います。これは、会社内のパソコンがネットワークに接続され、パソコン本体とプリンタをケーブルでつないでいなくても利用ができるようになっているからです。
ネットワークプリンタもハードウェアのひとつですので、起動する前はファームウェアが働いて動かせるようにしています。
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光学ドライブ
光学ドライブとは、CDやDVD、Blu-ray Discなどの読み込みや書き込みができるモノを指します。光学ドライブにもファームウェアが組み込まれ、ハードウェアの制御をしています。
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無線LANルーター
無線LANルーターとは、Wi-Fi(無線LAN)の電波をパソコンやスマートフォンなどのデバイスとインターネットを接続させる通信機器です。ファームウェアが制御することによって無線LANルーターが使えるようになっています。
また、インターネット接続に関する機器のため、セキュリティ対策に必要なファームウェアのアップデートが他の機器よりも多くなっています。
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ファームウェアの更新が重要な理由
元来のファームウェアはアップデート(更新)などの概念がなく、ハードウェアに組み込まれたまま利用され続けるモノでした。しかし現在では、技術進歩とともに機器によってはアップデートありきのモノとなり、更新をしないと問題が発生することもあります。
この項目では、ファームウェアのアップデートが重要な理由を3つお伝えします。
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セキュリティの向上
IoTの発達によって便利になった反面、パソコンなどと同じようにファームウェア自体のセキュリティ対策も必要になってきています。コンピューターウイルスや不正アクセスなどの悪意のある攻撃は日に日に巧妙になっていくため、ファームウェアの脆弱性をつかれないように定期的なアップデートが必要になります。
脆弱性が発見されたバージョンのまま利用していると、悪意のある攻撃の標的になりやすいため、ユーザー自身がアップデートに対する意識を持つことが肝要です。
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不具合の改善や防止
他のソフトウェアなどと同じように、不具合が発生した際は問題を改善・解決をするためのアップデートが必要です。不具合が発見されたファームウェアのバージョンのまま利用を続けていると、動作が安定せずに周辺機器が利用できなくなったり、最終的にはデバイス自体が使えなくなることも考えられます。
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機能の拡張
かつてのファームウェアはハードウェア自体のメモリ量が少なく、更新を前提として考えられていなかったため機能拡張などは基本的にありませんでした。しかし現在では、アップデートありきの機器も多いため、機能拡張を目的としたファームウェアの更新が必要になる場合もあります。
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ファームウェアの更新方法
無線LANルーターとその他の機器のファームウェア更新方法をお伝えします。
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無線LANルーターの場合
家庭用の無線LAN(Wi-Fi)ルーターにはNEC(Aterm)やBuffalo、I-O DATA、ELECOMなどがあります。どのメーカーも最近の機器はファームウェアの自動アップデート、あるいは手動アップデートをユーザーで操作することが可能です。自動アップデート設定をしておくと、インターネット環境下で更新通知が入り次第自動でアップデートします。
手動アップデートに関しては、機器や製品によって若干異なりますが、パソコンやスマートフォンから無線LANルーターの管理画面にログインし、ファームウェアの更新をすれば大丈夫です。また、その際には自動更新に設定しておくことをおすすめします。
加えて、古い機器になると無線LANルーターのボタン操作によってファームウェアを更新するモノもあります。利用している機器によって異なるので、製品番号から調べて確認をしてみてください。
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その他の機器の場合
プリンターなどのパソコン周辺機器やIoTでもファームウェアの更新が入ることがあります。自動更新設定になっているものが多いとは思いますが、手動更新をする場合は製品のWebページにアクセスし、更新ファイルをインストールするか、管理画面に入りファームウェアの更新をするかになるでしょう。メーカーや機器によって方法は異なりますので、その都度確認してみてください。
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まとめ
私たちが身近に利用しているパソコンやスマートフォン、無線LANルーター、家電製品などのほぼすべてにファームウェアは組み込まれ、見えないところで仕事をしてくれています。日常生活であまり意識することはないと思いますが、この記事をきっかけにそのような仕組みになっているとご認識いただけたら幸いです。