ローカライズとは?意味や重要性、ポイントを解説
海外旅行に行くと、各国の文化や風習の違いに驚かされることがありますよね。生活様式や消費しているサービスなども国によってさまざまです。ローカライズは、自国で作成した製品やサービスなどを他国で展開するために、非常に重要なものとなります。この記事では、ローカライズの意味や重要性、ポイントなどを解説しています。ぜひともご確認ください。
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Contents
ローカライズとは
ローカライズとは、ある特定の国や地域に向けて作られたソフトウェアやコンテンツを国外でも利用できるようにしたり、受け入れて貰えるように最適化することです。もともとはソフトウェアで利用されてきた言葉でしたが、現在はWebサイトやアプリ、広告、漫画、映画など、幅広い業界で利用されています。また、ローカライズは別の言葉に置き換えられることがあり、「ローカライゼーション」や英語の【Localization】を略した「L10N」、「地域化」などといわれることもあります。
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ローカライズと翻訳の違い
ローカライズは特定の国・地域の文化や宗教、法律などを考慮したうえでの対応となるため、言語だけを変更する翻訳とは意味が異なります。例えば漫画の場合、漫画のセリフを翻訳することに加えて、「ドッカーン」や「ドドド」などの擬音語を翻訳するか、しないかなどの判断は国によって異なります。
擬音語は日本語独特の文化のため、意味合いが同じでニュアンスを損なわない単語などを見つけることができれば翻訳をしますが、そうでなければ漫画というアート作品の表現のひとつとして、擬音語をそのまま掲載するパターンも多くあります。
他の国に作品やサービスなどを受け入れて貰うための内容変更に加え、作品やサービスなどが持っている作品性や独自性をいかに損なわずに適応させるか、どうすれば特定の国や地域の人々の琴線に触れるか、などという判断もローカライズには重要となります。
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ローカライズの重要性
慣用句やスラングを日本語に直訳しても意味が通じないことがよくあります。例えば英語の【Break a leg】という慣用句は、直訳をすると「足を折れ」になりますが慣用句としての意味は、ステージに立つ人やオーディションを受ける人に対して「頑張れ、うまくやれ」といった内容を伝える言葉です。また、「頑張って」という日本語は何かに挑戦するときや困難に対処するときなどに利用される言葉ですが、英語で日本語の「頑張れ」を表現する場合、【Break a leg】以外にも【Good luck】、【Go for it】、【Keep it up】など、シーンごとに適切な言葉は変わってきます。
ビジネスでは、例えばAmazonのトップページも日本、米国、英国で似ているところはありながらもそれぞれの国で異なっています。国ごとでサービスを浸透させる際に、国民の消費行動や感受性などが異なるっているため、国や地域に適した展開を見極めることが重要です。
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ローカライズを成功に導くポイント
ローカライズをする際に重要になるポイントを4つお伝えします。
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ローカライズする対象のサービスを理解する
当たり前の話になるかもしれませんが、サービスを提供する以上、対象サービスの深い理解が必要になります。ローカライズをする際に、サービスの根幹がぶれてしまっては自国内と同等の価値の提供が難しくなってしまいます。そのため、サービスの根幹や全体像、バックグラウンドなどをしっかりととらえなければいけません。
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ローカライズする国・地域を理解する
ローカライズをする国や地域についての理解はプロジェクト成功にとって非常に大切なことになります。言語や法律はもとより、文化や流行、媒体ごとのフォーマットなどを合わせていきます。現地法人がある場合は現地法人の職員に話を聞いたり、サービス展開やプロモーションなどについても、国や地域に最も効果的とされる方法を探していく必要があります。
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自然な翻訳にする
上述したように、ローカライズをする作品や製品、サービスの翻訳は自国語のニュアンスに近い、自然な言葉として提供しなければなりません。現地の言葉として不自然な翻訳をしてしまうと、対象物の魅力が削がれてしまいます。また、作品やサービスでキーワードとなる言葉の翻訳が不適切だった場合、その後の展開に支障をきたす可能性が高くなるため、慎重な対応が必要です。
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対象の国・地域で受け入れられるデザインを意識する
製品やWebサイトなどでよく用いられるデザインは、国や地域によって特色があります。例えば、日本語は縦でも横でも読むことができる言語ですが、欧州や米国、アフリカなどは横書きの文化です。中国語やモンゴル語、朝鮮語など、東アジア圏では縦書き文化が残っている地域もありますが、日本語の縦書きデザインをそのまま流用することは難しくなります。
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媒体別!ローカライズする際に抑えるべきポイント
媒体別にローカライズをする際に押さえておきたいポイントをお伝えします。
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マニュアル
マニュアルすべてを翻訳するのではなく、翻訳するべきポイントを見極めることが大切です。また、日本語は主語の省略ができたり、曖昧な言い回しでの意思疎通ができる言語になっています。この点でも独特な言語といえますので、短文や箇条書き、主語と述語を明確にするなど、ローカライズしやすいような工夫をあらかじめしておく意識が大切です。
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アプリ
アプリ機能とアプリストア検索でのローカライズが必要になります。アプリ機能では、翻訳やデザインなどのポイントを意識し、自国でリリースした機能や見た目を損なわないように変更を加えなければなりません。アプリストア検索の対策としては、キーワードやアプリの名前、説明文、画像などをローカライズしていきます。なかでもキーワード対策は重要なものとなり、ユーザーがよく選択するキーワードを設定できればそれだけでダウンロード率も高くなります。また、説明文などは自動翻訳にしない。画像などで映し出す文字もローカライズする、などの工夫が必要です。
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広告
広告の場合も、翻訳やデザインなどと注意するポイントは同じです。また、構想の段階でグローバル展開を考えて作成された「インターナショナリゼーション」な広告は、オリンピックやワールドカップ、各種スポーツの世界大会など、ローカライズしやすくなっているものが多いです。
広告には、テレビCMやSNS、動画配信サービスなどの種類がありますので、国や地域で最も利用されているプラットフォームはなんなのかを考え、効果を最大化させるために必要な場合、ローカライズ時に広告内容を大幅に変更することもあります。
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Webサイト
日本語のWebサイトは、弊社R-Stoneの転職コラムを含めて、記事の先頭に記事内容の目次があり、クリックをすると該当する目次に移動できるものが多くなっています。しかし、英語圏のWebサイトではそのようなものは少ないです。
また、Webページなどのタイトルも異なり、日本でRubyとJavaの違いをブラウザ検索する場合は【Ruby Java 違い】などの検索が多くなりますが、英語圏では「違い」という単語の【Difference】ではなく、【Ruby vs Java】が記事タイトルの多数を占めます。Webサイトの構成だけでなく、SEO対策も異なっていると覚えておきましょう。
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サービス/商品
Amazonの例でお伝えしたように、それぞれの国や地域にあった戦略が必要になります。サービスや商品に対する戦略は、翻訳やマニュアル、広告、Webサイトだけでなく、価格設定なども重要です。実際にAmazonでは、Amazonプライムの利用料金を米国や欧州で引き上げたのにも関わらず、日本では据え置き金額のまま提供されています。企業により戦略はさまざまですが、サービスの浸透率や同業他社と比べたシェア率などで価格設定をしているようです。サービスや商品のローカライズには価格も含まれると認識しておきましょう。
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ローカライズ翻訳者は不足している
Web業界が顕著な例となりますが、インターネットの情報量の増加にともない、Web情報のローカライズをおこなう翻訳者が不足しています。
過去のインターネット情報量の増加の推移や、5Gの普及などによってこの傾向が続くことは間違いなく、インターネット上には、需要があるにも関わらず翻訳がされていない情報で溢れています。そのため、ローカライズ翻訳のスキルを持った人材は重宝されることが予想できます。
出典:令和2年版 情報通信白書|データ流通量の推移 – 総務省
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まとめ
人口減少が予想されている日本では、作品や製品、サービスを展開していくうえで、ローカライズを重要な課題としている企業も少なくありません。業種を問わず、ビジネス活動を続けているなかでローカライズに対する話が出てくる可能性もありますので、言葉の意味をしっかりと認識しておきましょう。