VRMとは?VRMの特徴とできることを徹底解説
仮想空間で活躍する3Dの人型モデルを見かけることが増えてきました。仮想空間を飛び出してテレビ番組やCM出演するVTuberもいるほど、3Dアバターは身近なものになっています。
3Dモデルの作成は、複雑な作業や修行が必要な場合もありますが、VRMを使えば、ゲームのキャラクターをカスタマイズするような簡単操作でオリジナリティのある人型3Dモデルを作成できます。VRMとは何で、何ができるのかを詳しく見ていきましょう。
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Contents
VRMとは?
VRMは、人型3Dモデル(アバター)のファイル形式です。多くのアプリやプラットフォームで互換性があり、アプリケーションをまたいで同じ3Dモデルを利用できるのが特徴です。
かつて3Dモデルのファイル形式は、3D制作ツールを提供する会社やツールのバージョンによっても細かい違いがあり、ソフトによって読み込めたり読み込めても表示が崩れる場合がありました。
VRMの登場により、3Dモデルを1ファイルで扱え、互換性を心配せず手軽に利用できるようになりました。
VRMは、ニコニコ動画やVirtual Castを運営する株式会社ドワンゴにより2018年にリリースされました。
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VRMの特徴とできること
VRMは単に3Dモデルを保存するだけでなく、人型キャラクターの3Dモデルに特化しています。
人の表情や視線の動き、FPS視点(一人称視点)での利用に必要な情報、3Dモデル配布時に問題となりやすいライセンス情報などもあらかじめVRM形式に組み込まれているので、VRMモデルを作る3Dモデル制作者にとっても、VRMモデルを読み込むアプリケーション制作者にとっても利用しやすいデータ形式となっています。
喜怒哀楽、ウインク、口パクなどの顔の動きが規定されているので、コミュニケーションアプリやVTuber配信などで表情を変えたり、発音に合わせて口パクしたり、配信者の表情とシンクロさせるようなことにも対応できます。
VRMはアプリケーションでの利用を前提に構築されているため、3Dモデルを効率よくアプリケーションに読み込めるようになっており、プログラミングの負担を軽減でき、アプリの動作も軽くなります。
VRMはオープンソースのファイル形式で、VRM対応アプリケーションなら、生配信やゲーム、VR世界でのコミュニケーションなどいろいろなプラットフォームで同じ姿のアバターを利用できます。
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VRMのメリット
VRMを使うことで、3Dアバターの利用にどのようなメリットがあるのか、具体的に見ていきましょう。
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一つのVRMデータで複数のサービスに利用できる
VRMを使えば、同じアバターを配信で使ったりゲームで使ったりと、異なるサービスやアプリケーションで同じ3Dモデルを利用できます。
VRM対応ソフトを使っていれば、別の配信者の配信に参加したり、VR空間でゲームをするときにも配信と同じアバターを使えたりと、同じ3Dモデルのまま移動できるので配信者にとっても便利です。
3Dモデルの制作者にとっても、VRM形式一つを用意するだけでよく、別々のファイル形式で制作する手間を省けるためVRMはクリエイターに優しいファイル形式です。
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データが軽い
VRMは他の3Dモデルデータ形式よりも容量が小さい傾向があり、ファイルを転送する際や、アプリケーションが読み込むとき、短時間で効率がよく扱いやすいファイル形式となっています。
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アニメーション対応
VRMは人型3Dモデルに特化した仕様が盛り込まれているため、配信やゲームでモーションキャプチャーやリップシンクなどのアニメーションに対応できます。また笑顔や怒り顔などの表情も標準で対応しているので、アプリケーションやゲームに関わらず豊富なアニメーション表現で配信やゲームを楽しめます。
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オープンソースで誰でも利用できる
VRMは、作成や利用に必要な情報が公開されており、ライセンス費用も不要なため、開発者やユーザーが自由に利用したりアプリケーションを開発できます。ファイル形式の詳細はオープンソースとして公開されており、VRMを利用したアプリケーションを誰でも開発して自由に配布できます。
VRM形式に対応したツールやサービスを開発するために高額なライセンス費用を払ったり、許可を取ったりする必要がありません。オープンソースなため企業から個人まで誰でも望めば、自由に詳細な仕組みを知ることができます。
結果として、VRM関連のツールやサービスが多数登場し、賑わいを見せています。VRMの登場によって3Dアバターを使った動画配信や3Dモデルを使ったコミュニケーションがぐっと身近なものになりました。
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VRMデータの作り方
VRM形式の3Dモデルを作るにはいくつかの方法があります。
3Dモデリングの経験がなくても簡単に人型モデルを作成できるアプリとしては、パソコン用には「VRoid Studio」があり、スマートフォンのアプリとしては「カスタムキャスト」があります。
いずれのアプリも、ゲームのキャラクターをカスタマイズするように、基本となる人型モデルの顔や髪型、体型や衣装のパーツを選び調整していくだけで3Dモデルを作成できます。パーツの組み合わせやカスタマイズの幅も広いので好みの人型モデルを直感的に作れます。
本格的なモデル作成をするには、パソコンで「Unity」や「Blender」を利用します。
- 「Unity」は3Dモデルを読み込める汎用のゲームエンジン(ゲーム制作や映像制作に使用するツール)で、無償のUniVRMプラグインを使って3DモデルをVRM形式で出力できます。
- 「Blender」は本格的な3Dモデリングソフトで、作成したモデルをVRM形式に変換して出力できます。
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VRMに対応しているプラットフォームやサービス
VRM形式のモデルを使えるサービスやVRM形式のモデルを扱えるアプリケーション・プラットフォームをいくつかご紹介します。
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ニコニ立体
ニコニ立体は、ニコニコ動画などを運営する株式会社ドワンゴが提供する、3Dモデル投稿サイトです。 2018年からVRM形式のモデルも投稿が可能となり、3Dモデル制作者(モデラー)が作品発表の場として利用できます。
投稿された3Dモデルは、タグによる分類やコンテンツツリーによる派生作品の紐付けが利用でき、対応するWEBブラウザを利用している場合は、3Dモデルを回転させたり拡大縮小して鑑賞できます。
投稿されたVRMモデルはダウンロードしたり、メタバース上のコミュニケーションサービス「バーチャルキャスト」へ取り込んで利用できます。
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VRoid Studio
VRoid Studioは無料で利用できるWindowsおよびmacOSで動作するVRM形式の3Dモデル作成ツールです。ピクシブ株式会社が提供し、2021年に正式版がリリースされています。
高度な3Dモデリング技術のないユーザーでも、顔の作りや髪型、髪型、衣装やアクセサリーなどあらかじめ用意されたパーツを組み合わせたり、パラメーターを変更するだけでさまざまな人型モデルを作成できます。
また、ペンタブレットを使い、イラストを描く感覚で表情や服のデザインを作成でき、髪型をモデリングできるので2Dイラストが得意な方にもおすすめです。
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VDRAW
VDRAWはキーボードやマウスなどの一般的な機器だけでVRM形式のモデルを使った動画を作成できるWindows向けソフトウェアです。有償版と、無償のトライアル版が存在します。
VDRAWを使えば、ユーザーのマウス操作やキーボード操作、ゲームコントローラーの操作などを、あたかもVRMモデルがおこなっているような映像を出力できます。ユーザーがキーボードを打つと、映像のなかでVRMモデルが仮想キーボードを打つ仕草をするなどユーザーの動作をトレースした映像を作成できます。Vチューバーの動画配信やZoomなどのビデオ会議でVRM形式のアバターの映像を流せるようになります。
また、マイクがあれば、VRMモデルの口を動かすリップシンクが可能で、WEBカメラでユーザーの顔を入力すれば、VRMモデルの顔の向きなどに反映させることもできます。
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3tene
3teneは、株式会社プラスプラスが提供するVTuber(バーチャルYouTuber)向けソフトウェアです。
VRMモデルや3Dモデルを画面内に配置し、表情やポーズをつけられます。出力される動画は、各種の動画配信ツールや動画編集ソフト、ビデオ会議ツールなどで利用できます。カメラアングルや背景の変更も可能です。
また、パソコン本体の他にWEBカメラやモーションキャプチャー機器を用意すれば、VRMモデルに顔や上半身の動きだけでなく、腕や指の動きなどの細かい動きも反映させることが可能です。
3teneはWindowsとmacOSで利用でき、無料版の他に、より高度な動画に対応できるPRO版・STUDIO版も用意されています。
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SHOWROOM V
SHOWROOM Vは、VRM形式のモデルを使ってライブ動画配信ができるiOS向けアプリです。ライブ配信プラットフォームの運営を手がけるSHOWROOM株式会社が2018年にリリースしました。
パソコンなどの機器を用意しなくてもスマートフォンのアプリだけでVRM形式のアバターを使ったライブ配信をおこなえ、スマートフォンのカメラにより配信者の口の動きに連動するリップシンクなどに対応しています。VRMモデルのポーズなどはアプリのメニュー操作で選択するだけです。
ライブ配信以外にも、動画や静止画を作成しSNSにシェアする使い方も可能なので、スマートフォンだけで手軽にVRMモデルを使ってみたい方にもおすすめです。
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まとめ
VRMの特徴や利用例を見てきました。
- VRMは、人型3Dモデルを手軽にさまざまなサービスで共通利用できるデータ形式です。
- VRMは、人型モデルに特化し、表情などの動き、ライセンス条件があらかじめ組み込まれています。
- VRM形式の3Dモデルを使って動画配信できるアプリや、手軽に人型モデルを作れるアプリが多数登場しています。
VRM形式のモデルを使えば、一昔前は高額な投資が必要だった3Dの人型モデルを気軽に作成・利用できます。作成から配信までに必要なソフトウェアは無料からでも始められるので、VRMモデルを制作したり、VRMモデルを利用するアプリケーションやサービスの開発をしてVRMコミュニティに貢献したり、VRMモデルを使った配信や動画制作をおこなってみてはいかがでしょうか。