PMMとは?仕事内容とPdM・PM・POとの違いをわかりやすく解説
「PM」や「PO」は知っていても、「PMM」についてはご存知ない方も多いのではないでしょうか? PMMはプロダクト開発において重要な役割を持つ役職で、近年では認知度も上がってきている言葉です。
この記事では、「プロダクト」や「プロダクトマネジメントトライアングル」についてお伝えをしたあとに、PMMの仕事内容や「PdM」「PM」「PO」との違いなどをわかりやすく解説しています。初心者の方でもIT用語でつまずくことがないようにしていますので、ぜひともご確認ください。
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Contents
PMMとは?
PMM(Product Marketing Manager|プロダクトマーケティングマネジャー)とは、プロダクト内のマーケティング領域を担当する役職名です。PMMの解説をする前に「プロダクト」や「プロダクトマネジメントトライアングル」ついてお伝えし、PMMの概要とPdM、PM、POとの違いを解説します。
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プロダクトとは
プロダクトとは英語で【product|製品、生産物、結果、成果】などを意味し、和製ビジネス用語としては製品、商品という意味でさまざまな業界で利用される言葉です。マーケティング業界では、マーケティングの4P(Product|商品やサービスの概要・コンセプト、Price|商品の価格、Place|流通ルート・販売する場所、Promotion|商品の広告・宣伝・販売促進)という基本戦略のひとつにもなっています。
IT業界で「プロダクト」と呼称されるものは、ハードウェアとソフトウェア両方の製品や商品を指す場合と、ソフトウェアの製品や商品のみを指す場合があります。WEB上では両方の情報が見受けられますが、いずれにせよ、ハードウェアやソフトウェアの製品や商品そのものを「プロダクト」と呼ぶと認識してよいかと思います。
また、IT業界では「プロダクト開発」という言葉がシステム開発とは違う意味を持つ言葉として用いられることがあります。プロダクト開発に明確な定義はありませんが、プロダクト開発は「目的を達成させるために開発をしていくもの」、システム開発は「要件に沿ったシステムを開発させるもの」として区別している企業もあるようです。
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プロダクトマネジメントトライアングルとは
PMM(プロダクトマーケティングマネージャー)とは、その名前のとおりプロダクトのマーケティング領域を担当するマネージャー(管理者・監督者)です。しかし、
プロダクトの意味は分かっても、PMMの業務内容である「プロダクトのマーケティング領域」を理解するためには「プロダクトマネジメントトライアングル」についての基本的な情報が必要になるかと思いますので、その点について簡単に解説をします。
出典:The Product Management Triangle(筆者一部編集)
プロダクトマネジメントトライアングルとは、DoubleLoop代表取締役のDaniel Schmidt氏が提唱したプロダクトのフレームワークです。「開発者」「ビジネス」「顧客」の三つを頂点に置き、どれか一部だけが突出や陥没することなく、バランスよく強固な三角形を築くことが重視されます。図から見てもわかるように、中心にある「プロダクト」を開発していくためには「開発者」「ビジネス」「顧客」についての深い知識が必要となり、これらの領域を三位一体させて運営していく必要があるということです。
また、「開発者と顧客」「顧客とビジネス」「ビジネスと開発者」でつながる三角形の一辺では、「開発者が顧客を理解し、開発物に反映させる」「顧客の意見をビジネスに反映させる」「ビジネスの考えを開発者(開発物)に反映させる」などの関係性が成り立ちます。「それぞれの点が過不足なくバランスを保ちながら互いに関係性を持ち、中心にあるプロダクトをマネジメントしていくこと」がプロダクトマネジメントトライアングルの基本的な考え方といえるでしょう。
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以上を踏まえたうえでのPMMとは?
ここまでお伝えしたプロダクトに関することを見ていくと、「大変そう」だと感じる方もいらっしゃるかと思います。実際に、プロダクトを運営していくためには「開発者」「顧客」「ビジネス」に対する深い知識が必要なので、一人ですべての領域を管理することは難しくなっていきます。そこで、プロダクトマネジメントを分業する流れが生まれ、プロダクトのマーケティング領域を管理するPMMという役職が誕生しました。
出典:The Product Management Triangle(筆者一部編集)
日本では聞き馴染みのない役職ですが、GAFAやNetflixはもとより日本のIT企業でもPMMは徐々に採用されてきています。プロダクトマネジメントトライアングルでは、「ビジネスと顧客」あるいは「ビジネス」を担当する管理者がPMMだという説明が多くなり、企業によって具体的な仕事内容は異なります。しかし、マーケティングやビジネスに関する業務を担うことは共通しているため、PMMは「プロダクトのマーケティングやビジネスといった、利益・商売・お金に関わる管理をする役職」だと認識してよいかと思います。(業務内容については後述)
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PdMとの違い
PdM(Product Manager|プロダクトマネージャー)とは、プロダクト全体の管理者です。プロダクトマネジメントトライアングルだと、「開発者」「顧客」「ビジネス」の領域すべてを管轄する役職となります。小規模のプロダクトだとPdMが全領域を過不足なく担当することもできますが、大規模なものだと業務量の多さから、すべてを十分にカバーすることが難しくなります。そのため、マネジメント領域を担当するPMMとPMM以外の領域を担当するPdMとで分業をして、プロダクトを進めていく体制が採られます。
PMMとの違いとしては、PMMはマーケティング領域だけの管理者、PdMはマーケティング領域を含む、プロダクト全体の管理者ということになります。また、PdMを「PM」と表記することもありますが、「PM」はプロジェクトマネージャーの略称でもあるため使い分けが必要です。加えて、すべてを大文字で表す「PDM|Product Data Management|プロダクトデータマネージャー」という言葉がIT業界にはありますが、こちらは製品・設計の情報管理システムのことです。混同しないように注意しましょう。
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PMとの違い
PM(Project Manager|プロジェクトマネジャー)とは、プロジェクト全体の管理者です。PdMとPMの違いについて考える際は、プロダクトとプロジェクトのマネジメント対象から見るとわかりやすくなります。プロダクトマネジメントは、製品や商品に対する管理のことです。それに対してプロジェクトマネジメントは、製品や商品も含む、何かしらの目的を達成するための計画(プロジェクト)に対する管理のことなので、管理対象が違うことがわかります。
PMMはプロダクトのなかでもマネジメント領域の管理者となるため、プロジェクト全体の管理をするPMとは業務内容が異なります。
関連記事:プロジェクトマネージャーとは?必要なスキルと資格を紹介
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POとの違い
PO(Product Owner|プロダクトオーナー)とは、主にアジャイル開発やスクラム開発で用意される役職で、プロダクト全体の管理者となります。そのため、PdMと職務内容が重複しているが呼び方や設置される場所が違う役職としてとらえてよいかと思います。しかし、WEB上の情報ではこれら以外のPOの説明がされているものも見受けられますので、PdMとの違いについては企業や発信者によって内容が異なると認識しておいてください。
PMMとPOの違いは、PMMはプロダクトのマーケティング領域の専門職、POはプロダクト全体の管理者という点です。
関連記事:アジャイル開発とは?開発手法や開発の流れをわかりやすく解説
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PMMの役割と重要性
かつてのプロダクト開発では、PdMがプロダクトのすべてを管理していたため業務が膨大になり、プロダクトマネジメントトライアングルの「開発者」「顧客」「ビジネス」のどれかの領域が疎かになってしまうこともありました。しかし、PMMという役職を設けることで業務の分担ができるようになり、プロダクトマネジメントが効率化されるとともに、企業や開発チームにおいてもマーケティング領域の専門家を配置できるというメリットが生まれます。
どのような仕事にも当てはまりますが、マルチタスクで仕事をするよりも、シングルタスクで仕事をするほうが効率や専門性が高くなることは想像に難くありません。プロダクト開発のマーケティング領域を担うPMMがいることで、企業や開発チームは安心してPMMに業務を任せることができ、PMMも業務を重ねていくうちにスキルアップしていくことが見込まれます。これらの理由から、PMMという役職を設けるメリットは大きいといえるでしょう。
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PMMの業務内容
PMMの業務内容を4つお伝えします。
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ユーザー調査
ハードウェアとソフトウェアに関わらず、プロダクト開発をするうえで誰がユーザーになるのか、ユーザーが求めている機能は何かなどの調査は必須ともいえます。なぜなら、ユーザー調査の結果からプロダクトに必要な条件などを探し出し、プロダクトの意識決定に反映させるからです。ユーザー調査はプロダクト開発のマーケティングにおいて重要になるため、PMMであれば関わることが多くなる業務です。
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商品の売り出し方の計画
商品の売り出し方ひとつでセールス状況も変わっていきます。PMMはマーケティングの手法を駆使して販売戦略をたて、プロダクトの販売実績を上げるための計画を練る必要があります。ターゲットにしているユーザー像で販売戦略も変わってくるため、広告媒体の選定や商品のブランディングなど、PMMが計画することは多岐にわたります。
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商品リリースに向けてのスケジュール管理
当たり前の話になりますが、商品をリリースするためには商品が完成し、流通経路を確保しておかなければなりません。PMMはPdMなどのステークホルダー(利害関係者)と連携し、スケジュール管理をします。また、日頃からPdMと連携をとっていないと商品リリースはもとよりプロダクト開発に支障をきたしかねません。そのためPMMは、自分の業務領域に対する縦の意識と、プロダクト開発で連携する横の意識を大切にする必要があります。
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リリース後のサポート対応
プロダクトをリリースした後は、リサーチをしてユーザーの反応を見たり、プロダクトがユーザーのカスタマーサクセス(顧客の成功)に寄与しているかを調査する必要があります。なぜなら、プロダクトのユーザー満足度や売上げを上げるためには「プロダクトの改善」が欠かせないからです。プロダクトが完成した後も、商品としての販売を終えるまでプロダクトのサイクルは回っていくため、PMMはこれまで説明してきた業務などを繰り返すことになります。
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PMMに必要なスキルセット
PMMに必要なスキルを3つお伝えします。
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リサーチ能力
リサーチ能力は「調べる能力」と言い換えることができ、調べる能力は「ものごとを読み解く能力」ともいえます。ものごとを読み解くには観察力や分析力、発想力などが必要になり、これらを発揮するためには社会人としての基礎知識や教養が必要です。リサーチ能力はマーケティングにはなくてはならない能力ですが、リサーチ能力を磨くためには土台となる複数の能力が関係していますので、PMMを目指している方は、日頃から勉強していく姿勢が大切です。
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営業能力
リサーチをしてものごとを理解できたとしても、ユーザーの購買行動につなげる営業能力がなければ商品は売れません。PMMが直接営業をおこなうことはあまりないかと思いますが、PMMはプロダクトのマーケティングやセールス方法を管理する役職です。そのため、どうすればプロダクトがユーザーに選ばれ、売れていくのかを考える営業能力が求められます。
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マネジメント能力
PMMはマーケティング領域を管理する役職のため、マネジメント能力が求められます。社内の縦横のつながり以外にも、社外のステークホルダーと折衝する可能性があるため、自身が担当する領域を把握し、コントロールしておかなければなりません。管理者の優劣で業務全体の進捗が変わってくることは往々にしてありますので、PMMにはしっかりとしたマネジメント能力が必要です。
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PMMとして活躍できる企業の特徴
Microsoft365やGメール、Dropboxなど、SaaS(サース|Software as a Service)を開発する企業でPMMが求められています。SaaSのプロダクトはサービスが終了するまで提供され続け、顧客満足を高めるためにも上述した業務サイクルを繰り返すからです。また、中〜大規模のプロダクト開発をする企業ではプロダクトの効率化のため、小規模な企業でもDXを機会に新規プロダクトを立ち上げるためにPMMは貴重な人材になり得ます。
関連記事:クラウドサービスとは?メリット・デメリット、具体例などを解説
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PMMの平均年収
求人情報では、500〜1,000万円前後の求人が多数見受けられます。必須条件としては、マーケティングやプロダクトマネジメントの経験、新規サービスの開発経験などを求めるものがほとんどになっており、企業によってはエンジニアからではなく、マーケターからも転職ができるという特徴があります。
また、弊社R-StoneのPMM求人の想定平均年収は約731万円、想定最低年収は400万円、想定最高年収は1,100万円となっています。
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まとめ
PMMは世界的な大手IT企業では導入されている役職であり、近年は日本においても認知度を上げてきています。専門的なスキルが必要になるため未経験からの転職は難しいと言わざるを得ませんが、ある程度の経験がある方は企業の条件次第で十分転職できるかと思います。PMMに興味のある方は、求人情報を積極的に調べるようにしてください。この記事が少しでもお役立てになれば幸いです。